Treffen am Backhaus 

ドイツでパン・お菓子の修行をした人の集まり

「在独の日本人パン・お菓子職人」で集まろうという企画があるのですが、興味ありませんか? 
情報交換と協力のためのネットワークを作るのが目的です。ただ知り合って仲良くなるだけでもOKです。

伝統的なBackhausの薪オーブンで、おいしいPizzaやFlammkuchenを焼いて一緒に会食します。
詳しいパン焼きの様子は、ここをクリック してください。
Zwiebelkuchen(お菓子職人の方にお 茶菓子担当していただきます!)


日時 2007年9月29日(土) 14時から (次の日まで?)
会場 Baden- Wuerttembergの田舎のBackhausです。 詳しくは、また連絡します。
参加資格 ドイツでパンかお菓子のGeselle以上をとっている人。又は、その取得を目的に修行中であること。(Azubi)
参加費 実費(材料費・薪代等)


宿泊の手配も可能です。
参加条件に当てはまりそうな友達がいたら、ぜひ連絡してみてください!
参加希望者は私に連絡してください。なるべく早くお願いします。 

2007年9月29日に開催されました。

まずは皆さんお疲れ様でした!協力してくださった沢山の方々にお礼申し上げます!特にみちえさんには最初から最後まで協力してもらって 大感謝です。参加できなかった皆さんのために、29日の集まりがどんな様子だったかお知らせしてみたいと思います。

MeisterinenAm BackhausGruppenbild am Ofen

私 は、前日から買出し・下準備・Vorteigの仕込みなどに追われました。当日は、天気予報とは違っていいお天気にも恵まれました。みちえさんには朝の 10時ごろから、ピザとZwiebelkuchenとHefezopf用の生地の仕込みにかかってもらいました。たまねぎを刻んだり、りんごを剥いて切っ たり、Zwetschgenの種を取ったりには男性陣(みちえさんの旦那さんとうちの夫)も大活躍してくれました。あっという間に予定の11時半になり、 バタバタとBackhausに出発。そこで肝心のパン用の粉を忘れていくというハプニングもありました。また取りに戻ってくれたイグナツ、ありがとう!地 元のLandfrauenの人に今回は、パンの発酵カゴ・Blechkuchenの型・薪を使わせていただきました。貸 してもらう約束していたKneterが直前になって使えなくなり、みちえさんのキッチンエイドミキサーに頼りっ放しでした。みちえさん、15kg以上の生 地を捏ね続けてくれてありがとう!キッチンエイド君もご苦労様!(でも地元の婦人達は15kg、手で二回に分けて(!)捏ねるんだそうで、今度見せてもら うつもりです。)12時から窯に火を入れ加熱開始。大きな薪の束を結局9つ使いました。これは季節や、窯の余熱によって大きく左右します。約2時間15分 掛かって340度になりました。そこで、灰を全て掻き出しほうきと濡らした布で窯をきれいにしました。それはかなりの重労働なので途中から夫に助けてもら いました。その間、男性陣は飲み物を買いに行ったり参加者を駅に迎えにいったりしてもらいました。参加者が集まり始めたというのにゆっくり話も出来ず、い きなりZwiebelkuchenを仕上げてもらって大急ぎで窯入れ。なんといってもHolzofen というのは、適温で待ってくれないのでタイミングが命なのです。たったの数分でピザとZwiebelkuchenが焼きあがり、今度はパンの窯入れ。そこ での温度は280度くらいでした。パンの窯入れから焼き上がりまでは約1時間。その後、Hefezopfと餡子のZopf(餡子はみちえさん製!)、それ に果物のケーキを焼きました。その辺りでは温度はケーキにちょうどいい200度になっているのです。本当に、昔の人は熱を使いこなしていたのだなーと全く 感心せられます。

パン焼きが一段落してからは、友達に貸してもらったビアガーデンのイスと机で、ピザやケーキを食べながらひたすらおしゃべり。天気もよ くて、外に 座っているのが心地よかったです。もちろんどれも、下からの熱と薪の香りで何ともいえないほどおいしかったー!その日は、2社の地元の新聞社と製パン関係 の新聞社が取材に訪れました。どんな記事が掲載されたかは、また別の機会にお知らせします。

FeuerBrote im OfenKuchen

窯 の温度に振り回されて、途中ほとんど参加者の皆さんとゆっくり話をすることが出来なかったのは残念でした。もっとBackhausやHolzofenの説 明なども出来ればしたかったのですが、時間の都合で無理でした。残念!昔は、古くなってカビたパンを洗って(!)またオーブンに入れて焼いてから食べたそ うです。さすがはSchwaben! Holzofenの窯の上に、果物を乾かす棚が作ってあり、昔はオーブンの熱を乾燥果物作りに使ったのだとか。さら には、オーブンの上辺りにお風呂を沸かせるようにしてあり、曜日ごとに男の子女の子と決まっていて公衆浴場としても使われていたのだとか。本当に、人々が Backhausとともに長い間生きてきた歴史を垣間見た気がしました。今回みんなで焼いたパンは、Landfrauenの秘蔵のレシピを使わせてもらい ました。何百年も母から娘・孫に伝えられてきたのだと思うと感慨深い思いがします。Bäckerhandwerk もすごいけど、そう いうのも とても温かいなーと私は貴重に思います。

当日宿泊組みの皆さん総勢9名は、その日我が家で夜遅くまで飲んで食べてしゃべりました。食事はもちろ ん、自分達で焼いたBauernbrot、それにサラダとさし得れのハムとなすのディップなど。おいしくお腹一杯食べました。それに、あー日本語で分かり 合えるって幸せですねー。特に同業者特有の悩みであったり、辛さが分かるからお互いにスーッと分かり合える。それは本当に貴重な、そしてうれしい事だと思 いました。私の夫は、「唯一日本語の分からない人」で退屈したようでしたけど。笑うのに忙しくて、通訳しないでごめんね。涙が出るほど笑って、ストレス解 消しました!これからどうなっていくのかまだ分かりませんが、この集まりが何らかの形で将来につながっていけばいいなーと思うばかりです。

(2007年10月3日)

新聞取材

  1. Amtsblatt 地元の 広報紙
  2. Gäubote 1 Foto 地元の一般紙
  3. Gäubote 2  地元の一般紙
  4. Kreiszeitung  地元の一般紙
  5. Allgemeine Bäckerzeitung ドイツのパン屋の専門紙

(2007年11月29日)

手捏ね生地

今時のパン職人には考えられないことですが、南ドイツの田舎の主婦達は15kgくらいの粉なら二回ぐらいに分けて手でパン生地をこねて しまうんだそ うです。それを聞いたときは、私も半信半疑でした。自分で生地をこねたことがある人なら分かると思いますが、たった1kgくらいの粉でもそれはかなりの重 労働なのです。先日から「機会があったら見せて欲しい」と頼んでいたところ、やっとそのチャンスがめぐってきました。上記のBackhausの集まりでも お世話になった Frau Schmitt が、合計20kgばかりの粉でパンを焼くというので参加しました。

彼女がその日準備したのは、ピザ・たまねぎケーキ・白パン用の生地に小麦粉6-7kgとBauernbrot用の生地に Type1050(色の黒っ ぽい)粉6-7kgを2つ。(そのうちの一つには、ひまわりの種やゴマ・亜麻などが混ぜられていました。)彼女が白パン生地をこねて見せてくれ、孫娘さん がBauernbrot生地をこね、もう一つを私がこねることになりました。彼女は、粉も塩も水も計らないのだそうです!!「いつも同じ分量だから大体感 覚で分かる」そうです。「いつも同じスコップで粉を入れるから、それがないと困ることになる」とも。私の母が茶碗蒸しのだし
を計るのに、いつも同じしゃも じを使って「それがないと出来ない」と言っていたのを思い出しました。

Teig in MetallwanneTeig knetenHandgekneteter Teig

生地こねに使われていたのは、直径70-80cmはある金属製の桶とプラスティックの桶。金属製の方は、彼女のおばあさんの代から使わ れているもの だそうです。生地こねが始まって、驚くことはやはり塩も水も計らないということ。パン職人には考えられないことです。水の温度も、パン職人にとっては仕上 がりを左右する大きな要因ですが、彼女は手で温度を確かめるだけ。イーストを水で溶かしたものやVorteigと呼ばれる中種の上に、パラパラと塩を振り 掛けるのはパン職人としては見ていられない気になりました。(塩が直接触れることによって、浸透圧でイーストの細胞から水分が出てしまい活動しなくなって しまうのです。)彼女の手捏ねは、さすがに迫力がありました。時間的には15分以上掛かったと思います。機械で捏ねるのとは、生地にかかるエネルギーが違 いますから時間ではもちろん比較できませんが。私が捏ねたときにはもっと時間が掛かったように思います。彼女の息もすっかり上がって、私の腕が棒になって ようやく生 地が捏ねあがりました。機械で捏ねた生地よりも表面が平らではありませんが、生地が格段にやわらかいのもその原因でしょう。

この度は、私も1kgの粉で自分のBauernbrot生地を手で捏ねて、一緒に焼かせてもらいました。1kgの生地は、7kgに比べ てなんと簡単 に捏ねられることでしょう!!Frau Schmittの教えに従って、生地の様子を見ながらレシピの水の分量よりもずっとずっとたくさん加えました。パン職人用語で言うとTA180 くらいの感じで、思い切ってべたべたにやわらかい生地にすることが肝心なのだそうです。後で大体計算してみたら、レシピの分量の約3倍の水を加えていたこ とになります。パン屋でHolzofenbrotやSteinofenbrotを買うと、次の日にはパサつきが気になることが多いのですが、彼女の作るパ ンは日にちがたってもしっとりしていておいしいのです。薪オーブンのパンは、高温から中温に落としながら焼かれるので、普通のオーブンで焼いたパンよりも しっかり分厚い皮(Kruste)が出来ます。生地の水分が十分でないと、特に焼き上がりのパンが乾燥気味になるのではないかと思われます。

パン職人の間で伝えられていることわざに、「Kalt und weich macht Bäcker reich」というのがあるのを修行中に習ったことがあるのを思い出しました。「(生地が)冷たくて、やわらかいほどパン屋は儲かる」という意味です。水は材料とし ては安いものですが、生地をやわらかくすることによってパンがおいしくなり、お店の売り上げも増えるというのです。生地の捏ね上げ温度を低くして、長時間熟成させることでもパンはおいしくなるのです。こんな昔から知られている事実も、作業 のしやすさと作業の速さのためにパン屋さんでは残念ながらしばしば忘れられているような気がします。

BrotlaibSchnittBrotscheibe

もちろん今回も、焼きたてのおいしいたまねぎのケーキ・ピザをたらふくいただきました。家族や子供達が次々とBackhausに集まっ てきて、ケー キもピザもあっという間になくなりました。Backhausが今もみんなの生活の中にある、ということに感慨を覚えました。私のパンの上には、印として生 地が一 本線にのせられました。村で何人もの人が共同でパンを焼くときは、どれが誰のパンかわかるように生地で印をつけたり、枝を差し込んだりして焼いて区別した のだそう です。

今回の私のパンは、Backhausの集まりで焼いたものよりしっとりとおいしいものに仕上がりました。レシピにとらわれず「自分の手 の感覚で水分 を加減して生地を捏ねる」というのは、私にとっては新しい経験でした。その感覚は、残念ながら今時のパン職人が忘れてしまったものなのかもしれないと思い ました。今はコンピュータプログラム任せで、何でも出来てしまうことが多くなりましたから・・・。経験は理論に勝るというのも事実ですが、全くの彼女流も 毎回毎回結果の変動があるのではないかと思いました。そして全てが曖昧なため、失敗の原因を突き止めて次回に生かすことが難しいのではないでしょうか。レシ ピ に忠実なパン職人流と感覚を生かした彼女流、その中間がベストな方法ではないかと考えました。今度は、その方法で自分のパンを焼いてみようと思っていま す。
(2007年11月2日)