森と自然と環境

ゴミの事

Wertstoffhof Styroporドイツは、ゴミのリサイクル先進国と言われています。 さすがに市民のゴミ減量・リサイクル意識の高さには感心させられます。リサイクルバッグ(布袋)の使 用などは当然で(スーパーなどの袋は有料)、卵やハムなど入れ物持参で買う人も少なくありません。飲み物なども、まだビン入りが主流です。(今、缶入りの 飲み物にビンと同様Pfandを掛けるか、議論の真っ最中です。決まれば、購入の再に缶代を支払い、空き缶を返せばその代金を返してもらえることになりま す。)

私の住んでいる Baden-Württembergは、特に環境意識の高い地域でごみの分別は徹底しています。ごみは大きく分けて、ビオ(生ごみ)・ 資源ごみ・その他 のごみの3つに分けられます。(町によって多少の違い有り)資源ごみは、各自仕分けして収集場に持っていかなければなりません。ビオとその他のごみは、そ れぞれ専用のコンテナを各自(集合住宅などでは共同で)購入し、決められた曜日に家の前に出して回収してもらわなければなりません。大きいものほど値段が 高いのでごみを減らすことが直接節約することにつながります。ビオコンテナ本体と一年分のごみ収集料金は、例えばへレンベルクでは120Lで約45ユー ロ240Lで65ユーロです。(ごみの重さ別料金制になっている町もあります。その場合は、ごみの重量がコンテナに組み込まれているチップに記憶され て、値段が計算されます。)町によってはゲルベザックと呼ばれる黄色い袋で、資源ごみの一部を回収しているところもあります。もちろんゲルべザックは有料 です。Wertstoffhof Glas

古紙・古着・靴などは市内各地に専用コンテナがあり、いつでも投入することが出来ます。(ビンのコンテナも設置されていますが、投入は 騒音の防止のため日 中のみ。)その他にも新聞の広告欄やリサイクル専門の新聞があり、不要なものを(安価でまたは無料で)他人に譲ることができます。(私も最近、常々欲しい と思っていたBrottopf(パン保存用の蓋付き陶製容器)を新聞の広告を通じて無料で手に入れました.)

古紙・ダンボール・ガラスビン(透明・緑・茶)・缶・プラスティック・包装ビニール(大・小)・テトラパック・電池・発泡スチロール・ アルミ・金属製品・ 電球・電気製品等、小中大型ごみ(有料)・落ち葉や木の枝。ごみに関してはいくら進んだドイツでも、最終解決には至らずまだまだ議論は絶えません。でも、 ドイツ人の素晴らしい忍耐力と行動力できっと改善の方向に着実に進んでいくことでしょう。Wertstoffhof Dosen

人々勤勉さとその徹底ぶりには、圧倒されるものがあります。資源ごみ収集場に行く度、いつか見た強制収容所の写真を私は思い出してしま うのです。完璧に分 類されてうずたかく積まれたユダヤ人の品々。服・メガネ・時計・靴・金歯・髪…。それは私にはまだ重すぎる歴史で、在ドイツ8年後 の今も収 容所跡見学を果たせずにいるのです…。

包装とゴミ

ドイツのお店でものを買うと、日本と比べて非常に簡単な包装しかしてくれないことに驚くかもしれません。例えば、食事用大型パンなら紙 でくるむだけ、チーズも専用の紙でくるむ だけ、という具合です。(写真参照)中には、その紙さえ拒否して持参した容器や布かばんに入れて帰る人までいます。食品以外のお値段の張る買い物でも、も ちろん同じような感じです。靴やかばんを買ったときなどは、レジで「箱付き?箱なし?」と聞かれますし、スーパーでのビニール袋は有料です。ドイツでは、 包装は特別に人にプレゼントするときにお金を掛けてするものなのです。(最近はサービスのこともありますが)ですから、日常的に包装ゴミを増やさない習慣 が自然に出来てしまうんです。日本人から贈り物をもらうと、今でも見事な過剰包装ぶりに驚かされます。包装も気持ちを表しているのかもしれませんし、見た 目にはきれいなんですが、もうそろそろ地球のことを考えるレベルになってもいいのではないかという気がします。

Brot im Papier BrotVerpackung Kaese

(2008年4月9日)

森と散歩―木を切ってからまた植える??

ドイツ人と森の深いつながりに関してはよく言われることですが、本当にドイツ人はよく散歩します。(ちなみに”散歩"というとド イツでは、少なくとも 1~2時間自然の中を歩くこと意味します。)初めは、週末に店も閉まっているし他にすることがないのだろうかと思っていました。(最近まで、法律によって 店の営業時間、特に夕方・週末は厳しく規制されていました。近頃は緩和される方向にありますが、カトリックの多い南ドイツでは依然として反対意見が強く 残っています。土曜日に夜8時まで空けているスーパーなども出て来ましたが、24時間営業の店の存在など想像も出来ません。)私の住んでいるHerrenberg という町は、Stuttgart の南約25kmのところにある緑の多い美し い小都市です。近くの森には歩いてすぐ行けるので、私はしばしば散歩に出かけます。のんびり歩いて考え事をしたり、気分転換、落ち込んでいるときなど歩く と本当に気分が良くなりますから。ドイツ人の散歩好きの訳は、そこにあるのだと思います。Baum

ドイツの森を散歩すると、” 道が舗装されていない”ことに気づきます。それがとても心地よい ことにも、あらためて驚かせられま す。当たりが柔らかく、踏みしめるときに出る心地よい音と、なんとも言えない森の土の香り。「森にはなんとかいう 名前の物質があって、それが人間にとって高い癒しの効果がある」ということを聞いたことがあります。ややこしいことはさておき、その効果はただ歩いてみれ ば分かることです。いらいらしていた気分も落ち込んでいたことも、家族や恋人と歩いてみればすっかりどこかに行ってしまうはずです。もちろん、雨が降った 後は泥んこの状態になりますが…。でも、それが”自然”なのです。落ち葉が腐り、土に返 る。土は肥え、木々を茂ら す。そこで活躍し生存する無数の生命。水は地面にしみ込み、地下水を潤す。湧き出した水は小川となって流れる。その神秘に満ちたかけがえのない生態系を、 ”靴 ”のために壊すことはBaum bei der Baustelle人 間のエゴ以外の何物でもないと思うのは、私だけではないはずです。

私の母は、地元の三田市で熱心に緑化保全活動している程の”大の森好き”ですが、その母がド イツにくる度言うのは” 木が太くて自然な形をしている”ということです。(詳しい活動に関してはホームページをご覧下さい!http://www.sandagreennet.jp/) 三田市のニュータウンは、特に植えたばかりの細い木々が目立ちました。そうでなければ、電線や道路のた めに不自然に刈り込まれていたことも思い出されます。ニュータウンは、もともと山林だったところを造成して宅地開発したところです。どうして、出来る限り 元々の樹木を残さなかったのでしょうか?それは、切って植える方が手っ取り早いからに他ならないと思われます。ドイツでは、既存の樹木は丁寧に保護され、 建物は些か窮屈そうにその横で建築されていましたから。

一度、古い木のそのまま残る森を歩いてみれば誰でも、「木を切ってからまた植える」ということのおかしさ・愚かさに気づくはずです。確 かに木を切らせてか らまた植えさせれば、不必要な多額の税金が使われて経済は活性化されるかもしれません。でも、経済成長率が市民の生活レベルや幸せを反映しないことは、バ ブルとその崩壊で誰もが経験したはずです。”ちょっと歩きに行ける森”を市民のため、そして将来の市民のために に確保することこ そが、行政の役割だと思うのです。土木建築造園業界からの税収入は魅力には違いないでしょうが…。

古家の改装―家を壊してからまた建てる??

私の住んでいる家のすぐ隣にある、かなり古い木組みの家の改装が最近始まりました。日本でならすぐ解体されて、あっという間に新ピカのビルが建てられたに 違いありません。なんと言っても、町の中心、一等地ですから。その建物は、見るからに古そうで壊れかけてもいたので誰も住んでいませんでした。建物が改装 中に壊れないように、まずは支柱で保護しての大工事です。前の道路の通行も規制されて、工事は半年以上続くと予想されています。へレンベルクの町は人口3 万人余りの小都市ですが、古い木組の家の町並みと美しいMarktplatz(市広場)が魅力で多くの観光客がやって来ます。Herrenberg Markt

旧市街は美観保護のために、古い建物の取り壊しが完全に禁止または厳しく規制されているようです。(建物の建材と色の規制は特に南ドイ ツで厳しく、規格外 の物を希望すると高額の税金を支払うことになります。)単純計算すると、ドイツでも古い建物を解体して新築する方が安いのですが、美観保護規制に反して解 体することは高額の税金を意味します。それに古い建物を残す場合には、市からの補助金が期待できますから結果的に安上がりになります。Fachwerkhaus neuFachwerkhaus

私の住んでいる家も例外ではなく、昔の木組の家がそのままきれいで快適に改装されています。この地方一と言われる旧市街は、そのおかげ で美しい調和を保っ てまるでおとぎの国のようです。考えてみると、それが日本人観光客を惹きつけているのです。美しい町並みに加えて、電線やネオンサインのないことの心地よ さを、ドイツに来たことがある人なら分かってくれるはずです。「ちょっとパンを買いに行くことで心が安らぐ」町。そんな町に住めることの豊かさを、私はし みじみ感じています。

はじめて日本を訪れる外国人に、関空から市内までの景色を”日本の第一印象”として見せるの を躊躇してしまうのは私だけではない はずです。町に買い物に出た後の、なんとも言えない疲れは日本特有のもののような気がします。残念なことです。同じように敗戦から再出発した日本とドイ ツ。すぐ目先の復興を目指した国と、遠い将来の世代のゆとりある暮らしを考えた国。こんなところにも、つい民族性の違いを感じてしまうのです。

みんなの安らぎを守るために”規制する”ことと、それを支持・支援する市民。個人の自由を優 先するがために、多くの市民が損害を 被るのであれば意味がありません。”自由と規制”のあり方に、もっと一人一人が敏感になる必要があるのかもしれ ません。気候の違 いは有るにせよ、強い意識さえあれば古い町並みを守ることは可能であると信じます。日本の素晴らしい”芸術”と も言える古い民家 を、ぜひ次の世代に残してほしいものです。一度失われてしまったら、もう二度と取り戻せないのですからー。

Teilauto- Stadtmobil

Stadtmobil今 年6月に、車を手放して「車のない生活」を始めました。前々から考えていたことなのですが、交通の便のいい所に住んでいるとは言え、いざ実行とな るとやっぱり勇気の要ることでした。 Teilautoというのはcarscharingのドイツ語で、車を個人で所有せずにみんなで共有しようという試みです。1987年にスイス人が考案 し、ドイツでは1991年にFrank Naumann, Dietmar Pühler, Uli Schollmeier らにより発足。 最近ではドイツ各地のみなら ず、ヨーロッパ各地で行われていて、参加者は外国でも車を利用することが出来ます。システムは、簡単に言うとレンタカーのようなものですが、もっと時間的 にフレキシブルで良心的な値段です。学生・一般・法人、それに地元の交通機関の定期券所有者用などの値段設定があります。そのシステムに加入するには、契 約を交わし保証金(550ユーロ)と契約手数料(60ユーロ)を払います。料金は、月々の基本料金(7ユーロ、家庭9ユーロ)と車の種類によって異なる時 間当たりの「基本料金」それに「走行距離料金」からなっています。時間ごとの基本料金は、早朝や深夜はほとんどただの様な安さです。走 行距離料金も、100km以上、700km以上は割引になります。ガソリン代も込みの料金なので、ガソリン代の値上がりを気にすることもありません。車が 必要なときに、電話かインターネットで必要な時間だけ必要な車を予約します。最短予約時間は1時間から。それぞれが所持している鍵とカードによって、近く の駐車場にとまっているTeilautoの車を予約した時間のみ使うことが出来ます。他の町ではどうなのか知りませんが、ヘレンベルクの車は真っ赤で 「Stadtmobil」とほとんど目立たず小さく書いてあるだけです。家具を買うときなどは大きな車、町での買い物には小型車と必要に応じて使い分けら れるので便利です。たとえば、先日夫の会社にたくさんのケーキを持っていくのに車を使いました。予約したのは小型車オペル コルサ、予約時間3時間。走行 距離約35km。その時の料金は、 

3 X 2(時間当たりの基本料金) + 35 X 0,2(km当たりの基本料金)= 13 ユーロ    高いとお思いですか?でも、ガソリン代を払わなくていいし、車検の心配もしなくていいのです!

Teilautoドイ ツ人は論理的な説明に弱いので、Teilautoのサイトにはこんなグラフィック付きで「いかにこのシステムが経済的であるか」を説明してあります。(そ の効果でか、利用者は着実に増加しています。)それによると、個人所有の小型車は平均 して月々300ユーロの経費が掛かるそうです。もちろん、車は全く使わなくても保険や税金・車検の費用などが掛かります。走行距離が増えれば、これらの費 用の比率は全体から見ると下がりますが、逆にガソリン代は増加します。このグラフは、月々の走行距離と月々の経費の合計を示しています。月々の走行距離が 約1200km以下の場合、このシステムによってかなりの経費が節約できることが分かります。月に500km走行する人なら、個人で車を所有した場合月に 約230ユーロの経費が掛かりますが、Teilautoシステムなら月に120ユーロで済むのだそうです。  私達は、以前から出来るだけ歩いたり電車を使ったりするようにしていましたので、このシステムで全く不自由さは感じていません。旅行なども、思い立ってと いうよりは前もってプランするたちなので、このシステムは私達にとってベストな方法だと思っています。

経費の面だけでなく、環境面でのポジティブな効果も期待できます。それに自動的に歩いたり身体を動かすことが多くなりますから、健康面 でもいいこと尽くしです。日本ではあまり普及していないそうですが、これからもっと広がっていくことを期待します。

(2007年8月1日) 

Fensterblumen

早春のある日、突然町中に